深い愛情で結ばれた家族

ライフマップで生きがい発見!! story21
さわやか宗像館(福岡県宗像市)

 荒木ツヤ子様は昭和10年12月生まれの85歳。新元号の令和に変わった興奮さめやらない2年前の5月末に、さわやか宗像館へ入居されました。白髪一つない奇麗な黒髪が印象的で、話しかけるといつもにこやかに微笑んでくださる明るい方です。長く過ごした佐賀県から移ってきたにも関わらず、辛さや苦しさを顔に出すことなく、いつも逞しく生活を送られていました。

 そんな荒木様が体調を崩されたのは今年の初めでした。一時は生死をさまよい、当館への復帰すらも危ぶまれましたが、何とか一命を取り止め無事、宗像館に戻ることができました。退院後は車いす生活を余儀なくされていますが、持ち前の明るさで懸命にリハビリに取り組まれ、以前の生活を取り戻しつつある中、入居されてから2回目のライフマップによる聞き取りを行いました。

荒木様のライフマップ

 荒木様のルーツは佐賀県にあります。10人兄妹の末子として生を受け、お父様が生業としていた麹屋を手伝いながらすくすくと成長されました。戦争で疎開を強いられた幼少時代も「貧しくはなかったし悲しくもなかった」と笑って振り返っておられました。お父様の厳しさやお母様の優しさを受け、逞しい幼少期を送られたのでしょうね。

 高校を卒業すると、興味のあった服作りを職にしたいと、知り合いの洋裁店に就職されます。仕事については「今でも服作りはしたい、天職だったと思う」と楽しそうに語っておられました。退職した後も趣味で続けておられたようで、話の節々から心残りのようなものも感じました。

 20代前半でご主人と出会い結婚します。当時はまだ珍しかった恋愛結婚で「バスに居合わせて見初められた」と照れ臭そうにおっしゃっていました。2人の子宝に恵まれ「優しくて賢い子に」と願いながら専業主婦として家を守り続けられました。何を隠そう、その子宝の一人が、現在さわやか倶楽部の運営指導部で活躍している原田裕子さんです。

娘の原田さん、宗像館のアイドル犬ムナちゃんと一緒に

 原田さんから見た荒木様は、子どもの意志を尊重する優しい母で「女性でも手に職を持たなければならない」と当時では珍しい考え方をお持ちであったそうです。自分の人生の中の未練や想いを子供らに託したのかもしれませんね。

 元々趣味が少なく、今もやりたいことは特にないという荒木様。一見、何事にも無関心に見えますが、それは「郷に入りては郷に従え」というお父様に言われた言葉を守っているからだそうです。自分の身が危ない時でさえ娘の仕事を案じ、今も「子どもたちには強制も束縛もしたくない。自由に生きてほしい」と語られたように、子としても親としても深い家族愛を持った方であると感じました。

 これからもご家族の深い愛情に囲まれながら幸せに生活できるよう、職員一同で精一杯お手伝いさせていただきますね。

(井元 雄基)

※写真・文章は、入居者様ご本人およびご家族様の許可を得て掲載しています。