入居への覚悟に応えたい

ライフマップで生きがい発見!! story5
さわやかなんよう館(愛知県名古屋市)

 89歳のすゑ子様は、入居前、さわやかなんよう館のショートステイを利用されていました。色々なことにどんどん挑戦する行動的で活発な方でした。そのすゑ子様が独居生活に不安を覚え、なんよう館にお世話になりたいと決意されたとの知らせがありました。入居前の状況調査では、社交的で協調性もあり、認知力の低下もほとんど感じられませんでした。自宅を引き払って施設で余生を過ごすにあたり、自分の事は自分で決め、しっかりとやっていかなければいけないといった本人様の覚悟も感じました。そんなすゑ子様の覚悟にお応えできる「最高の生きがい」を提供できるよう、支援を開始しました。

 当初のケアプランでは、カラオケが趣味と伺っていたことから「カラオケ喫茶への参加」や、余暇活動の充実として「活力朝礼・行事・レクリエーションへの参加」など、少し包括的な内容のサービス提供となっており、本当に「最高の生きがい」を提供できているのかという思いがありました。ケアプランを更新するにあたり、本人様の現在の思いを伺い、真のニーズを汲み取る為、ライフマップを使ってお話をさせていただきました。すると、「両親が幼い頃に他界し、親の愛情をもらえなかったというつらい思い」「夫にひと目ぼれをして24歳で結婚、25歳で長男様が誕生」など、過去の人生の様々な喜怒哀楽について話してくださり、ライフマップがみるみるピースで埋まっていきました。

すゑ子様の ライフマップ

 現在の思いについても伺うと、「今は塗り絵をしているよ。集中できるから時間が経つのが早いよ」と話され、他の入居者様から感想をもらって次の作品に生かしたり、良くしてくれる職員にプレゼントするなど、自分の作品を誰かに見てもらいたいという思いがあることを知りました。思い返すと、今までフロアに行くと、すゑ子様が「佐藤さん!これ見て!」といつもきれいな色合いで作られた塗り絵を見せてくださっていたのを思い出しました。「もっとみんなに見てもらいたい」という心の声が聞こえたように思います。そこで、塗り絵にただ色を塗るだけでなく、多くの方に披露していただくプランを立てることにしました。

 まずは担当の介護職員が居室の内外、廊下やフロアに、すゑ子様の傑作を掲示しました。お気に入りの作品を飾る額を準備すると、すゑ子様は大変満足されていました。また、出来上がった作品を収納して、他の入居者様に見ていただく為の作品集ファイルも作りました。

 今、なんよう館は、すゑ子様の作品のおかげでとても明るく素敵に彩られています。施設を見学に来られたお客様に、すゑ子様が施設案内をする機会を設けることもできました。すゑ子様がフロアを案内しながら自分の作品を紹介する様子は、とても生き生きしており、最良の気分を味わっている表情を見せていただくことができました。その後、離れて暮らしている長男様が来館された際にも、作品を披露しながら楽しく交流されている素敵な姿が見られ、家族と心を繋げるツールにもなると思いました。これからも「最高の生きがい」をライフマップで届けていきたいと思います。

(さわやかなんよう館 佐藤 有紀)

※写真・文章は、入居者様ご本人およびご家族様の許可を得て掲載しています。