一流の人の行動に学ぶ

【山本幸三先生の謙虚さ】

 2021年10月31日に、第49回衆議院議員総選挙が行われました。コロナ禍における国政のかじ取りを担う政治家を選ぶ重要な選挙で、結果的に自民党が単独過半数を確保して政権与党としての安定感を示しましたが、各地域においては様々なドラマがありました。

 本社のある福岡10区においては、現職議員2名が立候補して一騎打ちムードとなりました。自民党から出馬した山本幸三先生は、これまで8回当選されたベテラン議員で、当社も以前から様々な形でお世話になっていました。政界では経済通として知られ、安倍内閣ではアベノミクスの仕掛け人として活躍し、内閣府特命担当大臣など要職を歴任された経験があります。山本先生が座右の銘に掲げられている「去私利他(私を去って他人を利する)」という言葉は、仏教の「自利利他」という言葉を変化させた山本先生の造語ですが、初めて聞いた時はその意味に大いに共感し、社員向けの会議の中でも紹介しました。

 選挙の結果は皆さんもご存じの通り、残念ながら山本先生は僅差で落選となりました。開票日の翌日、本社の周囲を散歩していた時、私の隣に突然大きな車が止まったので、驚いて思わず立ち止まりました。すると、車の中から山本先生が降りてきて、私に声をかけてくれたのです。

 「内山会長、期待に応えられずに申し訳ありません!」

 その無念さが込められたお詫びの言葉は、決して私一人に向けられたものではなく、これまで関わってきたウチヤマグループの社員や取引先の方々も含めた多くの方に向けられたものとして、しっかりと受け止めました。人は本当に苦しい時に本性が現れると言います。大臣まで経験された山本先生が、わざわざ私のために車を止めて謙虚に頭を下げられたことに、その懐の深さ、人間としての器の大きさを感じさせられました。

【手紙で伝わる真心】

 先日は、私のもとに一通の手紙が届きました。送り主は、ウチヤマグループが2019年の6月に開催した特別講演会で講師にお招きした河野景子先生でした。

 美しい直筆の文字で書かれた文面を読んでいくと、そこには当社が毎月お送りしているこの「ウチヤマタイムズ」を楽しみに読んでくださっていることが書かれてあり、当社が推進している高齢者の口腔ケアについても関心を寄せられていました。河野先生は元アナウンサーであり、現在は「ことばのアカデミー」という学校も主宰されています。「あ・い・う・え・お」の発音をしっかりするだけでも口腔ケアに良い影響があることも手紙の中で教えていただき、当社に対する心遣いが伝わってきて、とても嬉しく思いました。

 また、以前北九州市で副市長を務めておられた際にたいへんお世話になった藤原通孝様からも、丁寧な直筆文字のお手紙を頂きました。さわやか倶楽部が大分県の別府で運営している温泉ホテル「さわやかハートピア明礬(別府市大字鶴見1190-1)」を先日利用していただいたとのことで、その時のホテル側の対応についてお礼の言葉が綴られており、さりげない言葉の数々から伝わってくる温かい人柄とその真心に感動しました。

 コロナ禍に入り、今まで当たり前だった「人と直接会う」という機会がこの2年ほどはかなり減っています。この間、オンラインでのミーティングが急激に普及するなど、技術の進化によって解決できるところも多くありましたが、手紙を交わすことで近況や思いを伝えあうという、電話やパソコンがなかった時代から私たちが利用していた心の伝達手段の大切さも、最近あらためて感じるようになりました。

 相手に何かを伝えたいときは、立場に関係なく心から正直に言葉を発することが大切であり、簡単に会えない人に対しても、手紙を活用することによって丁寧に思いが伝えられることを、一流と呼ばれる方々から学びました。皆さんも日頃の生活の中で意識しながら、ぜひ実践してみてください。

ウチヤマグループ会長 内山文治