バーテンダーは入居者様

ライフマップで生きがい発見!! story3
さわやかレークサイド中の原(福岡県北九州市)

 78歳の尾野様は、脳梗塞によって生活に支障のない程度の後遺症はあるものの、お元気で若々しい男性です 。積極的に他の入居者様やスタッフとのコミュニケーションをとられ、行事にも自主的に参加されています。車椅子の方のお手伝いや、認知症の方のお話し相手になってくださり、入居者様でありながら、社員に頼られるような方です。

 まさにパーフェクトな尾野様のケアプランで私たちが最初に取り上げたのは、尾野様が希望されたリハビリと、ご家族様の希望された健康管理、「節度のある飲酒」というプランでした。そして迎えたケアプラン見直しの時期、ライフマップを使って思いを伺ってみました。

 尾野様の今の状況は、脳梗塞を発症後、このまま何もしなければ寝たきりになると言われ、必死でリハビリを頑張った結果であることがわかりました。「自分も車椅子だったことがあるから、動かしにくいことが分かるんだ」と、車椅子の方のお手伝いをしてくださっている理由を知りました。

「やっぱり!!」そう思った私は、尾野様は皆から頼りにされていることが生きがいになっていると考え、「人の役に立つこと、喜ばれることが生きがいになってますか?」とお尋ねすると、「自分が経験したことだから自然と手が出るしね、生きがいになる」と話されました。

 今までのプランはなかなか良かったのだと納得したのもつかの間、少し間を空けて、言いにくそうに「それも確かに生きがいと言えば生きがいだけど・・・僕にとっての楽しみがほしいね」とポツリ。そして、以前入居されていた20歳年上のある男性入居者様のことを話し始めました。「いつも同じ楽しみを共有し、真の友人であり、親父であった。またそんな真の友に出会いたい」という希望を、そこで初めて打ち明けられたのです。

 私は、ライフマップのカードに出てきた思いをしっかり書きとめていきました。今までのケアプランには本人様の本当に望む生きがいは入っていませんでした。自立され、何でも楽しそうに参加して下さる尾野様から、私たちはその思いを汲み取ることができていませんでした。

 その後、ライフマップで出てきた思いを新しいケアプランにしました。新しいケアプランをスタートさせてから、私達の関わりは変わりました。「真の友人探しのきっかけ」になるようにと。そして尾野様は、また真の友人を見つけることができました。今は一緒に囲碁をして、一緒に外食してお酒を楽しみ、一緒に旅行に行く。それが本当の生きがいになっています。

 そして、新たな取り組みも始まりました。それが、尾野様がマスターとなって施設内で開催する女性専用BAR「passion(パッション)」です。バーテンダーの尾野様が作るカクテルは毎回大好評で、女性の入居者様が若返る場所になっています。

 ライフマップの活用によって、自己主張をされない尾野様の真の思いを、私達は知ることができました。尾野様が「皆様の為」に活躍されるだけでなく、なんといっても「自分の為」になるように、今後も陰ながらサポートさせて頂きます。

(さわやかレークサイド中の原 小林 さおり)

※写真・文章は、入居者様ご本人およびご家族様の許可を得て掲載しています。