支援の方向性を見直し生きがいに繋ぐ

ライフマップで生きがい発見!! story29
さわやか和歌山館(和歌山県和歌山市)

 今回ご紹介するのはS様、現在84歳の認知症のある女性の入居者様です。

 入居されてから3年目になりますが、徐々に認知症状に変化が見られ、物の認識が曖昧になってきました。タンスの中の衣類などをベッド上に大量に並べ、手元にあるものを手あたり次第重ねて着たり、枕カバーを首からかけたり…と今までには見られなかった行動が目立つようになり、仲の良かった利用者様も少し距離を置くようになってしまいました。そこで、職員が介入することで問題は解決できると考え、しばらくは片付けや着替えを手伝うといったお世話型の支援を行っていました。そんなある時、これでいいのか?と模索していた中でライフマップの話を聞き、S様への関わりについて「何か別の糸口を見つけるきっかけになればいいな」との思いでさっそく活用してみることにしました。


S様 のライフマップ

 言葉で聞いても「よくわからないのよ」と返されることが多かったので「どこまでお話を伺えるのかな?混乱させてしまわないかな?」という気持ちでライフマップを広げました。すると物珍しそうに「ゲームをするのね」と【ファッション】のカードを手に取られました。そこから話を進めていくうちに、おしゃれに関することや、家族のために料理を作ったりして楽しかった頃のことなど、今まで知らなかったS様の一面を知る機会になりました。ご本人の興味や楽しかった思い出がそこにあるなら、それらを引き出しながら、今までのお世話型でなくご本人と一緒にできることに目を向けた支援に方向性を変えてみようと考えました。

 まず、タンスに大量に詰め込んでいた衣類を、今の季節に着れる物だけに減らしました。そして、その中から明日着る衣類をおしゃれが好きな利用者様も交えて一緒に選んだり、選んだもの以外は一緒に場所を決めて片付けるといった作業を繰り返しました。

 するとその作業がS様の生活の日課になり、片付けられたことに自信も出てきたのか、今ではS様のほうから声をかけてくれるようになっています。それでも時々は、スカーフのように枕カバーを肩からかけて出てこられますが、それも愛嬌です。一緒に服を選びたいと言ってくれる利用者様も増え、選んだ服を褒められるのも嬉しいようで、機能訓練中もこの笑顔です。

 他の利用者様との交流が広がって笑顔が増えたことに伴い、混乱や帰宅願望も以前に比べ減ってきています。一度に色々と進めていくのは難しいと思いますが、今後はレクレーションの一環として、お料理を含め色々な趣味活動の場を作っていけたらなと考えています。

 これからもライフマップの活用で、困難と感じられる支援の糸口を見つけるきっかけ作りに繋げていきます。

(ケアマネジャー・弓中 聡子)

※写真・文章は、入居者様ご本人およびご家族様の許可を得て掲載しています。