想像力を働かせよう

【知識よりも想像力】

 仕事や生活をする上で、必要な知識を得ることは重要です。最近はインターネットの発達によって、欲しい情報は世界中から瞬時に検索し、手に入れることができる便利な世の中になりました。しかし、知識ばかりに頼りすぎると、本質を見失ってしまうことがあります。特に、人と人とのコミュニケーションにおいては、一般的に正解とされる行動が必ずしも目の前の相手を満足させるとは限りません。恋愛においても、マニュアル通りに行動するだけで必ずうまくという保証はないでしょう。大切なのは、相手のことを知り、状況を理解した上で、そこに想像力を働かせることです。

 日々の仕事において想像力を働かせることは大切なことです。特に人を相手にサービスを提供する私たちの業種・職種においては、お客さまが何を望んでいるか、どうすれば喜んでいただけるかを常に意識して、そのニーズを満たすことで、満足感を高めることができます。

【石田三成に学ぶホスピタリティ】

 日本の戦国時代においても、想像力を働かせたホスピタリティで出世を遂げた人物がいます。

===========三献茶============
豊臣秀吉が近江長浜城主だった頃、鷹狩途中に在る寺を訪れた。
「羽柴筑前じゃ、茶を所望致したい」
後頭部が突き出た少年が持ってきた大きな茶碗には、ぬるめの茶がはいっていた。鷹狩で喉が渇ききっていたので、秀吉は一気に飲みきった。
「小気味よし!さらに一服所望じゃ」
二杯目の茶碗は前に比べると小さめで、湯はやや熱めで量は半分くらいであった。秀吉はそれを飲み干し、もう一服を命じた。
三杯目の茶碗は高価な小茶碗で、湯は舌が焼けるほど熱く量はほんの僅かであった。秀吉はこの少年の気配りに感心して長浜城へ連れ帰ったと云う。
この後頭部が突き出た心利いたる少年が幼名佐吉、ついで三也と称し後年に石田治部少輔三成となるのである。【武将感状記】より
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 ホスピタリティの基本は、相手に喜んでもらいたいという姿勢、気配りです。それを形で表すために必要なことは、相手が何を望んでいるのかを察知し、先回りの行動で示すことです。そこには、相手の気持ちを読み取る想像力が欠かせません。

【過去の常識にとらわれず、最適解を追求しよう】

 理論物理学者として「相対性理論」など数々の功績を残し、ノーベル物理学賞を受賞したアルバート・アインシュタイン博士は、「想像力は、知識より大切だ。知識には限界があるが、想像力は、世界を包み込む。そして進歩を促し、進化を引き起こす」という言葉を残しています。科学の世界においても、過去の知識や常識が新たな事実の発見と考証によって覆され、歴史が塗り替えられて現在に至ります。ダーウィンの進化論やニュートンの万有引力の法則など、過去の常識を鵜呑みにせずに、目の前の問題に集中してそれを解決するための想像力を働かせた結果、今までに誰も気づかなかったような良い案が浮かび、その発明や発見が人類の進化につながっているのです。

 新型コロナウイルスという人類がこれまで経験したことのない未知のウイルスについても、誰もが正解を持たない手探りの中で、日々新たな知識や情報を得ながら対策を考え、実践してきました。マスクの着用や周囲の人との接触など、国の中でも意見が分かれる中で、どのように行動すべきかを一人ひとりが場面に応じて考え、判断する必要に迫られることもありました。今でも仕事が思うようにできなかったり、行動を制限されたりして、大変な思いをされている方も多いと思います。しかし、「どうすればこの危機を乗り越えられるか」を皆で想像力を働かせながら、信念を持って行動を続けていれば、必ず良い方向へ向かっていけると信じています。ウィズ・コロナの環境に求められるサービスのあり方を、過去の常識にとらわれることなく自分達で考え、時代に合わせて進化させていきましょう。

ウチヤマグループ会長 内山文治