趣味のギター演奏がコミュニケーションのきっかけに


ライフマップで生きがい発見!! story33
さわやかリバーサイド長岡(新潟県長岡市)

 T様は長岡市内で6人兄弟の5番目に生まれました。他のきょうだいは全て女の子で、唯一の男の子として大事に育てられました。繊維業の仕事をしながら兼業農家で田んぼを耕していたそうです。25歳のころにお見合い結婚をされ、3人のお子様にも恵まれました。当施設へ入居される前は、末のお子様家族と同居されていました。

 2018年頃より物忘れなどで日常生活に支障が見られ始めました。2020年に精神科を受診され、アルツハイマー型認知症と診断されたため、車の運転免許を返納されました。この頃より気力や意欲の低下が見られるようになります。2021年には奥様が急に亡くなり、無気力・意欲低下に拍車がかかった様子も見られたとのことです。他の家族も仕事などあり、日中にT様のお世話をする人がいないということで、2022年7月1日にさわやかリバーサイド長岡へ入居されることとなりました。

 入居後は自室で横になって過ごすことが多く、食事とトイレ以外はなかなか起きることがありませんでした。表情も乏しく、話かけても返事がなく無反応な時も見られ、日中の活気が見られませんでした。レクレーションや行事等にお誘いしてもあまり参加されず、周りの人たちとのコミュニケーションも無く、発語も聞かれない状態でした。たまにレクに参加されても、周りの方を見ているばかりで、お誘いしても活動することは見られませんでした。そんなT様に対して、入居後1か月後で暫定ケアプランを見直す機会に、ライフマップを作成しました。

T様のライフマップ

 初めは自発的な言葉が聞かれませんでしたが、ギター演奏について話すと表情がガラリと変わりました。どのような経緯で誰から教わったのか、どこで演奏したのかなどを嬉しそうに話してくれるようになり、そこから幼少期の話などもいろいろと話をしてくださいました。

 ライフマップを使って過去を回想していく中で、青年期は青年会に入会し、そこでギターを先輩から教わってギターを弾くのが好きになったことを話してくださいました。村や町での演奏会に参加することが楽しみの一つだったそうです。今後については「人の世話にならないなら長生きをして過ごしたい」という想いを聞くことができました。

 ライフマップによってわかったギター演奏の趣味を今後の生活の充実に生かすため、施設の中でギターを演奏する機会を設けてみることにしました。まずはご自宅にあったT様のギターをご家族様に持ってきていただき、個別機能訓練の中でギター演奏を取り入れました。機能訓練指導員の鶴巻職員が講師となってT様のお部屋で個人レッスンを行うと、はじめは指使いが思い出せなかったり弦を押さえる指が痛かったりと、思うようにいかなかったT様でしたが、だんだんと演奏の仕方を思い出すにつれ、自然な笑顔が見られるようになりました。

 その後はT様が自発的にフロアでギターを演奏する姿が見られるようになり、音楽のレクレーションでは職員と一緒に曲を披露してくださいました。このことがきっかけとなり、他の利用者様とコミュニケーションする姿も見らるようになり、会話が続くことで発語も増えてきました。

 ライフマップを通じてT様の楽しみを見つけることができ、それを施設で実現することで日々の生活の楽しみに繋げることができました。まだ日中は横になる時間の方が多いこともありますが、今後もライフマップを活用することでT様の生活が笑顔であふれるよう、スッタフ一同協力していきたいと思います。

(ケアマネジャー・ 佐藤 奈美)