スポットライトをもう一度

ライフマップで生きがい発見! Story 2
さわやかレークサイド中の原(福岡県北九州市)

 なんでも自分で出来る。カラオケ大好き。得意の手芸でお人形を作ることが日課。ピアスにラメ入りの服、お洒落に気を使う若々しい女性。そんな88歳のチエコ様。入居から9年。「腎機能低下で余命幾ばくか」と医師から告知がありました。

 私たち職員は、病状が思わしくないチエコ様に「まずは安心と安全が守られるように」という思いから、今行えていることを大切にしようと考えました。そんなチエコ様があるとき口にされた「スポットライトを浴びたい」という言葉が、私の胸にひっかかっていました。今出来ることを優先し、安心、安全を守ろうとするのはチエコ様の本当の思いなのだろうか?と考えるようになり、その後「ライフマップ」を使ってお聞きした思いに、はっとさせられました。

チエコ様のライフマップ

「もう一度輝きたい」「私はまだやれる」「居酒屋のママをしていたころの自分が一番輝いていた」

 そうだ!チエコ様が一番輝いていた頃に戻っていただこう。施設の中で輝ける場所を作ろう。そう決意を固めた私たちは、施設内に「スナック・もいちど」をオープンし、チエコ様にその店のママになっていただくことにしました。

 準備を進めるにあたって、周囲に大きな変化が起こりました。ご家族様から衣装のプレゼント、ボナーのカラオケ部門からはミラーボールのプレゼント、電気工事士のご家族様はボランティアでそのミラーボールを天井に設置して下さり、ディスプレイ用のワイングラスやお酒の瓶は、多くのご家族様、スタッフが進んで寄贈して下さいました。気が付けば多くの人が「スナック・もいちど」に引き寄せられていました。

 医師から「余命幾ばくか」と告知されたチエコ様です。本当にママとしてスナックを切り盛りできるのかという心配は直前まで募ります。しかし、いざスナックがオープンすると、お洒落をしたママとしての品格が自然に感じられ、誇りある輝く時間を過ごされました。テレビ番組の取材では「今が青春なの」と笑顔で話されました。

 スナックは好評で定期開催となり、回を重ねるごとに来店されるお客様が増加。あまりイベントに参加されない男性入居者様も「スナックなら行こうか」と、皆が楽しみにする社交場となりました。

「スナック・もいちど」オープンから1年半、チエコ様は天国に旅立たれました。「余命幾ばくか」と言われながらこんなに長く安定した状態が続いたのは、きっとチエコ様の輝く場所があったからではないでしょうか。

 人生の最後の大切な時間を全うしていただくことは、お父様やお母様を施設に託して下さっているご家族様に与えられた私たちの使命です。娘様にも、チエコ様の輝ける時間に関わって頂くことができたのではないかと思います。「手芸が得意だったお婆ちゃん」、 だったチエコ様は、ライフマップの活用によって「粋なスナックのママ」としてさらに輝き、私達にステキな思い出を残してくれました 。

(さわやかレークサイド中の原 小林 さおり)

※写真・文章は、入居者様ご本人およびご家族様の許可を得て掲載しています。