ライフマップで生きがい発見!! story20
さわやか鳴水館(福岡県北九州市)
村上アサ子様は1940(昭和15)年1月1日に田川市でお生まれになり、現在81歳。偶然にも隣接する嘉麻市出身の将棋棋士、ひふみんこと加藤一二三名人と同じ誕生日です。さわやか鳴水館にご入居されたのは2017年2月28日、急性心不全の治療後でした。入居当初から「小さい時から苦労した」と言われていましたが、入居から2年経過した2019年2月に実施したライフマップの作成にあたり、より詳しくお話を聞くことができました。
戦前から戦後にかけての混乱の時期を生き抜いた女性の「根性」をライプマップからうかがい知ることができます。園芸や料理への興味が感じられましたので、声かけを行いましたが、継続して行えたのは体操や行事参加、たたむ作業等でした。ライフマップ作成以前は誰かと話すことが楽しみの一つでしたが、作成後は施設内の軽作業にもよく参加されるようになりました。
2020年の2月頃から、徐々に新型コロナウイルスが日本国内で拡大に伴い、行事等を控えるようになりました。人と話すことが大好きな村上様は、心身においての低下もなく平穏に過ごされていましたが、7月21日の朝に右半身の脱力を認め、救急入院となりました。診断は脳梗塞。搬送先の担当医からご家族様に「いつどうなってもおかしくないので、身内を呼んでほしい」と説明がありました。
その後、生命の危機を脱してリハビリ病院への転院も勧められましたが、ご本人の希望により8月4日に鳴水館へ戻ってこられました。しかし、脳梗塞の後遺症から発語が少なくなり、座っていても体が傾くような状態で改善がなかなか見られない中、9月28日に血中酸素飽和濃度が80%台まで下降しました。倦怠感の訴えや呼吸苦もあり、心不全の既往もあることから、今後の対応についてご家族様に相談し、同日付で「ターミナルケア同意書」を締結。その後約2ヶ月間は、ご家族様がほぼ毎日、数分でも面会に来られました。何度も明日の命を考える日々でしたが、職員皆で支援できることを続け、12月には年末年始の行事にも参加できるほどに改善していきました。安定した体調が続いたこともあり、2021年5月に2回目のライフマップを作成しました。
今回は、2年前に作成したライフマップを見ながらお話をお伺いしましたが、驚くことに、昔の出来事については1回目の時よりもさらに細かい話が出てきたため、一部加筆しました。コロナ禍での村上様の願いは「子どもに会うこと」です。制限ある日々の中で、村上様の夢や希望はささやかな願いに変わり、現在は「家族に元気な姿を見せたい」という想いが生きる支えとなっています。
命ある限り人生は続いていきます。村上様の人生の地図の続きを作ることができたこと、2年前のことを思い出しながら話せたことは、ご家族様だけでなく日々の生活を支える私たちにとっても嬉しいことの一つです。新型コロナウイルスにより新しい生活様式が続いていますが、村上様の精神力から「人間は思うよりも強く、しなやかに世の中に適応して生き抜くことができる」ということを感じています。いつか大声で笑い合える日や、外出が自由にできる時がやってくると思います。その時まで村上様は「頑張る」と言われています。私たちはその頑張りを支え続けていこうと思います。
(梶原 加代子)
※写真・文章は、入居者様ご本人およびご家族様の許可を得て掲載しています。