ライフマップで生きがい発見!! story24
さわやか桜館(秋田県仙北市)
2008年に桜館に入居された外村様は、カラオケをこよなく愛される北九州市生まれ83歳の男性です。桜館での生活も13年になりました。今回ライフマップを活用して人生を振り返っていただき、今後の生きがいとなるものを見つけられたらとお話をうかがいました。
外村様は6人兄弟の6番目に生まれ、18歳から様々なギャンブルにはまりパチンコは70歳まで止められず、お兄さんには「ギャンブルばかりしよって面倒みん」と言われたそうです。お見合いで結婚した奥様との間に子供は授からず、その奥様は61歳の時に癌で亡くなってしまいました。友達の紹介で64歳で劇団の照明係の仕事につき、79歳の時に石川県で劇団宿舎の手摺りのない階段から落ちたそうです。おやおや、計算が合いません。施設入居時の情報で確認してみると、秋田県のホテルで階段から落ち頚髄損傷で岩手医大に入院されたのが70歳。頚椎カラーを装着しての入居でした。家族の連絡先を記入した手帳があったらしいのですが、劇団で処分してしまったようで誰とも連絡が取れないそうです。「連絡をとって会いたい人はいませんか」と確認してみると「兄の息子には会いたい。お金を貸しているから」という返事が返ってきました。今後、ここで何をしたいですかと確認するとカラオケの他は思いつかないらしく「あとは出てこないなぁ。考えておく」と答えられました。
毎週日曜日に開催するカフェでは「コーヒー薄めのぬるま湯ミルクを少し入れて」と注文されます。カラオケは3曲ほど唄って楽しまれ、レパートリーは200曲もあるとのこと。100円均一の小魚ふりかけが大好きで、買い物レクが再開される日を待ち望まれています。楽しそうに暮らしているようなのに、何歳までを目標に元気で生きていく予定ですかと伺うと「ケガばっかりするからもう生きんでいい」と返答されました。杖を使って歩行されていますが、おしぼりたたみやカーテンの開け閉め、毎食の献立紹介の記入などたくさんお手伝いをしてくださるので、生きがいづくりに繋がっているものと思っていた私は、少し残念な気持ちになりました。
「やりたいことがあった。グランドゴルフや!」と事務所に来られたのはそれから1週間後のことでした。以前はどこかから道具を借りてきて桜館の中庭や小学校でやっていたそうです。そこで、グランドゴルフ場を持つ近くの温泉施設の支配人に話を聞いてみると、新型コロナの感染拡大でグランドゴルフの大会の企画は中止になっているとのこと。また、コースが8ホールもあることを聞いて、外村様がここでプレーするには移動が大変ではないかと感じましたが、グランドゴルフができるように何とかしてあげたいと思いました。1週間も考えて返事をくれていたことがうれしかったからです。
そこで、まずは道具からと民生委員をしている友人に連絡してみると「クラブが欲しいならあげるよ」ということで早速、受け取りに行きました。ボールは桜館の職員が持ってきてくれました。とんとん拍子に準備が進み、外村様と一緒に段ボールに人工芝を固定してグランドゴルフの練習場が完成しました。
実際はコースに出て楽しみたいのではないかと思います。担当者会議でも「膝は痛いがクラブを杖代わりにするから移動も大丈夫。ゴルフもしていたから練習なんかしなくてもすぐに本番でも出来る」と発言していました。基礎体力をつけるためにも、無理のない程度に体を動かしていただきながら、いつか本当のコースに立てるようにサポートしていきたいです。
(三浦 公子)
※写真・文章は、入居者様ご本人およびご家族様の許可を得て掲載しています。