あせらず、のんびり、マイペースで

ライフマップで生きがい発見!! story27
さわやかながれやま館(千葉県流山市)

 2021年8月、S様が介護老人保健施設からさわやかながれやま館に入居されました。杖を使用しながらも足取りはしっかりとされていました。事前面談の時、S様ご本人より「楽しむ時間を持ちたい。自分の足で歩き続けたい」という思いを伺うことができました。施設の中で楽しく生きがいを持って過ごしていただけるよう、S様にとっての「楽しむ時間」を知る為に、自宅で暮らしていた時の様子や趣味の話をさらに伺いました。自宅では洗濯や掃除、料理も行っておられたようです。定年後は趣味としてテニス、スキー、登山、水泳、絵画、ガーデニングと充実された日々を送られていたようです。海外旅行にも行かれ、音楽、ギターにも興味を持ったことなど、たくさんの思い出話をしてくださいました。

 話を伺う中で、絵を描くことであれば施設でも楽しめるのではないか、「自分の足で歩き続けたい」という思いには、毎日の活力朝礼に参加していただくことで運動する機会を継続的に提供できるのではないか、と考えました。早速、絵を描くための環境作りや活力朝礼へのお誘いを試みましたが、いずれも実際の取り組みには繋がりませんでした。

 そこで、ライフマップを使ってさらなる思いをさぐる為に、お話の時間をいただきました。

 若い頃は大手企業で仕事一筋に経理の仕事をされていました。28歳の時に結婚され、3人の娘様に恵まれました。定年後はテニスやスキー、絵画など趣味の時間を楽しみ、80代では奥様の介護を行っていたそうです。何事にも一生懸命で几帳面、真面目なS様です。絵は油絵を本格的に描かれ、展覧会にも出展していたようです。現在94歳のS様のライフマップでは、100歳を目標年齢としています。「これまで」を振り返り「これから」を一緒に考えましたが、94歳からの生活で何かこれをしたいという特別な思いは出てきませんでした。

S様のライフマップ

 ご家族様も、S様がまた絵を描きたいのではないかと思われていたようでしたが、S様にとって絵を描くことは過去の経験の一つであり、今は体力的にも絵を描きたいと思われていないことが分かりました。自分の足で歩き続ける為の活力朝礼の参加については、他の入居者様と一緒に体操をすることは年齢的にも負担なので、ご自身ができるリハビリがしたいという思いを知りました。ストレスを抱えない生活を送りたい、これまでの生き方があるから今の自分がある、今後はのんびり、ゆっくりとね、と話されました。その話をお聞きしてからは、何かを提供することばかりに目を向けるのではなく、自分の考えを明確に発信されるS様の思いや生活に寄り添わせていただくようにしました。

 現在はご自身のペースで毎朝新聞を読まれ、ご自身のペースでレクリエーションに参加され、ご自身のペースで花に水をやり散歩をします。若い頃と同じことをしたいのではない、いくつになっても自分の足で歩きながら健康を維持して穏やかな日常を送っていきたい。そしてその日常にほんの少しの追加として、散歩をして、お友達と会話をして、手紙が書ければ、それが私の「楽しい時間、幸せな時間」と話されました。今日も笑顔いっぱいで散歩され、個別リハビリに取り組まれています。

 生きがいの感じ方は人によって様々です。これからもライフマップを活用して入居者様の思いを知ることで、生きがい作りのお手伝いをさせていただき、皆様が笑顔でいられる施設作りに取り組んでいきたいと思います。

(ケアマネジャー・太田黒 典子)

※写真・文章は、入居者様ご本人およびご家族様の許可を得て掲載しています。