介護の社会的役割と時代の変化への対応

【介護の日に考える】

 11月11日は「介護の日」でした。介護への理解と認識を深め、高齢者やその家族、介護従事者、地域の方々との支え合いや交流を促進する日として、「いい日、いい日」と読む語呂合わせから2008年に厚労省が制定しました。元々は、過去にウチヤマグループの特別講演会でも講師にお招きした諏訪中央病院名誉院長の鎌田實先生が代表を務める「がんばらない介護生活を考える会」が2005年に「介護の日」を制定したのがきっかけで、当初は9月25日だったそうですが、現在は11月11日に統一されています。改めて、介護福祉に携わる原点に戻り、私たちに求められる社会的な役割や使命を考える機会にしたいと思います。

 私は常々、介護という仕事は『究極のサービス業』であると社内外に向けて発信しています。人生の先輩にあたる高齢者の方々に対して、ご家族様などの代わりにお世話をさせていただくことは、その方の大切な命を預けていただいているということでもあります。その仕事の中で、お客様との関りを通じて得られる学びや喜びには、他の職業では得られないような貴重な体験もあります。介護に携わる職員の皆さんには、そうした尊い仕事への誇りと自信をもって、日々の業務に努めていただきたいと思います。

 現在開催されている「第10回介護甲子園」では、全国からエントリーした8219事業所の中からトップ30事業所に、さわやか倶楽部の4施設が選ばれています。こうしたイベントを通じて、介護の業界や仕事に対する理解が深まることを期待して、さわやか倶楽部では全施設が毎年参加しています。私たちが基本理念に沿って実践している介護の内容を、多くの方に知っていただく良い機会にもなりますので、社外の方へも広く告知を行いましょう。また、私がかつて理事長を務めていた「社会福祉法人八健会」からも「地域密着型特別養護老人ホームひびきのもり」が最終予選に進出していますので、こちらもぜひ応援してほしいと思います。

【介護の担い手不足に備える】

 10月23日に厚労省から発表された「2020年版厚生労働白書」によると、日本で高齢者人口がピークを迎える2040年には、医療福祉分野の就業者が1070万人程度必要になり、全就業者の約5人に1人を占めると推計されています。人口減少が進む中、医療や介護の担い手が不足することに対する懸念とともに、先端技術の活用などによる現場の生産性向上や、少子化対策を早急に推進することの重要性が示されています。

 ウチヤマグループでは、産学官の連携を通じて、そうした将来の課題解決に向けた取り組みを以前から進めてきました。現在、九州工業大学と共同で行っているIoT技術を活用した実験では、介護記録等の業務効率化を目的としたアプリの開発が実用化に向けて着々と進行しています。他にも九州大学とは「ライフマップ」の開発を通じた高齢者の生きがいづくり、九州歯科大学とは口腔ケアの充実による健康維持の取り組みをそれぞれ行っています。

また、日本人の労働力不足に対応するため、海外人材の活用にも着目し、さわやか倶楽部の子会社がインドネシアに設立した日本語学校を通じて、技能実習生やインターンシップの受け入れを進めています。現在も国内にあるさわやか倶楽部の介護施設では、若い技能実習生たちが日本人の職員と一緒に介護の仕事をしており、2年目の滞在のために必須となる評価試験にも全員合格しました。明るくやる気に満ちあふれた彼ら、彼女らの働きぶりは、既存の施設職員にも良い刺激をもたらしてくれています。

 高齢化が進む日本において、介護の仕事に対する社会的な役割はこれからますます大きくなり、その取り組みが注目される機会も増えてくると思われます。日本の社会、介護福祉分野の将来像を的確につかみ、今後私たちが社会やお客様のために何ができるかを一緒に考えながら、その中で必要とされる企業であり続けられるよう、今までの固定概念にとらわれることなく、新しい取り組みにも積極的に挑戦していきましょう。

ウチヤマグループ代表 内山文治