【今年で生誕250周年】
年の瀬が近づいてくると、クラシックの名曲『第九』を耳にする機会が多くなります。今年は新型コロナウイルスの影響で、多くのコンサートやイベントが中止を余儀なくされていますが、こんな時こそ本物の文化や芸術に触れ、心を癒す時間を大切にしたいと思います。
『第九』を作曲したルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンは、1770年の12月16日にドイツに生まれ、今年で生誕250周年を迎えました。56年の生涯の中で約500曲の作品を残しています。『運命』や『英雄』、『エリーゼのために』など多くの楽曲が親しまれ、現在でも盛んに演奏されている偉大な作曲家ですが、その人生は波乱に満ちたものでした。
宮廷のテノール歌手だった父ヨハンは、息子をモーツァルトのような有名音楽家に育てたいという野心を持ち、幼い頃からスパルタ教育で鍛えました。その成果もあって、7歳にして演奏会を開き、11歳で作品集を初出版するなど、早くから才能を発揮しましたが、アルコール依存症に陥った父はやがて仕事を失い、子どもたちにいっそう辛くあたるようになります。そんな状況の中、ベートーヴェンは宮廷でオルガンを弾いたり、ピアノ教師の仕事を懸命に勤めたりすることで、一家を養いました。
20代半ばになると難聴に悩まされるようになり、音楽家にとって命の次に大切な聴力を失いました。31歳の時には悪化した聴覚障害の苦悩に耐え切れず、遺書を書くほど追い込まれたようです。他にも、家族の親権争いや身もだえするような激しい失恋など、数々の辛く苦しい出来事を経験します。この度重なる逆境を乗り越えられたのは、音楽を自分の体の一部のように愛してやまぬ、純粋な気持ちが根底にあったからでしょう。
【運命を受け入れ、信念を強く持とう】
私自身、少年時代からクラシック音楽に親しみを感じ、レコードやCDを集めてきました。中でもベートーヴェンはお気に入りの作曲家の一人で、休憩中や車での移動中などに曲を聞きながら気持ちを静めたり、奮い立たせたりしています。様々な苦難に直面するたびにその激しい思いを音楽に込め、情熱を燃やしながら素晴らしい作品を生み出していくベートーヴェンの精神力の高さは、今を生きる私たちにも生きる希望と勇気を与えてくれます。
ベートーヴェンが残した手記の中には「勇気を出せ。たとえ肉体に如何なる欠点があろうとも、我が魂はこれに打ち勝たねばならない」という当時25歳だった彼の若き日の苦悩と覚悟がつづられています。
音楽家にとって聴力を失うことがどれほど大きい損失であるか、その悩みの大きさは想像を絶するものがあります。しかしベートーヴェンは音楽家であることをあきらめず、さらに情熱を注いで曲作りに励みます。そうしてできあがった作品の一つ、交響曲第5番『運命』の、あの有名な出だし「ジャジャジャジャーン」というインパクトのある旋律に多くの人が魅了されるのも、ベートーヴェンの魂の叫びが時代を超えて私たちの心に伝わってくるからだと思います。
現在はコロナ禍により、辛い思いをしている方も多くいます。しかし、起きている物事を悲観的に捉えるのではなく、状況をしっかりと見つめる中で自分自身を認め、与えられた使命や心に秘めている強い信念に気付くことができれば、どんな困難をも乗り越えるための一歩を踏み出すことができると思います。今こそ私たちの理念の主題である「人のお役に立てる企業であり続ける」という信念を持ち、困っている方々やたくさんある企業の中から当社を選んで利用していただくお客様に対して、情熱と優しさを込めた素晴らしいサービスを提供していきましょう。
ウチヤマグループ代表 内山文治