ライフマップで生きがい発見!! story10
さわやか室蘭館【北海道室蘭市】
2019年4月22日、明治42年生まれのタケ様が介護老人保健施設から入居されてきました。110歳です!!ご家族様に付き添われてシルバーカーを使用しながら、足取りもしっかりされています。職員や入居者様からも「本当に110歳ですか?」と驚きの声!声!声!アセスメントに伺った時に聞いたお話で一番印象に残っているのは「冷蔵庫から好きな時に好きな物を出して食べる事が出来ない所には行きたくない」これだけは譲れないという思いを伝えてくださいました。朝が苦手と話されていたので、「体調に合わせて朝礼やレク、各種行事に参加し楽しむことが出来る」を目標に施設生活が始まりました。
入居当初はトイレにも職員が付き添っていましたが、余計なお世話かな?と思うほど身の回りの事はしっかりとご自身で行うことが出来ます。さわやか室蘭館での生活にも慣れてきた9月14日に、ライフマップの作成を行いました。
明治42年2月5日北海道登別市生まれ。両親や兄弟のことを、エピソードを交えながら楽しく真剣に話して下さいます。「父は馬車で木材を運ぶ仕事をしていたよ」「10歳の時に母が亡くなって小さな弟の面倒を見ていたから学校には行けなかったよ」「21歳で結婚し、夫は15人兄弟の長男だったから休む間もなく家の為に働いたよ」「3人の子供が生まれたけど昔だから子供を柱に縛り付けて外に水を汲みに行ってね、泣いてかわいそうだった」今では考えられない苦労があったようです。
ご主人は昭和53年に72歳で亡くなります。その後は自由にのびのび!旅のイメージカードを指差します。「色んな所に行ったよ。遠くには行けなかったけど」何歳まで生きていたいですか?の問いには「ふ、ふ、ふ…?今の暮らしまあまあだね。誰にも面倒掛けないようにそぉ~っと生きていきたい」
ライフマップを通じて、タケ様は子供の頃から家族の為に働き、若い頃もおしゃれをしたり遊びに行く事も出来なかったことに気付きました。お声をかけると何にでも挑戦してくださる タケ様。ある日、お化粧のプロがボランティアで来館されました。タケ様は「やってみたい」と早速着席。すまし顔でブーケを付けてもらいます。普段見る事の無い華やかさ!とっても素敵です。お化粧をする方も「110歳のタケ様にお化粧をさせてもらえるなんて嬉しいです。感激!」と、とっても喜んで一緒に頬紅や口紅の色を選んでいます。自分で選んだ口紅をつけ完璧です。鏡を見てにっこり笑うタケ様「口紅を付けたのは自分の結婚式以来だよ」え~!何年ぶりですか(笑)89年ぶりの口紅です。「冥土の土産にね、やってみた」と嬉しそうです。
明治・大正・昭和・平成・令和と五つの時代を生き抜いてきたタケ様。さわやか室蘭館全職員の自慢でもあり、他の入居者様の意欲をかきたてる存在でもあります。長生きの秘訣は「何でもバリバリ食べること」と話されています。何にでも一生懸命取り組み、挑戦していく気持ちが生きる糧になっているのだと、タケ様の話や行動の中から学びました。
今年の2月5日で111歳になられました。地域ではもちろん最高齢です。昨年の敬老の日にはテレビ局からの取材を受け、テレビ出演もされています。娘様が家の風呂場で転んだ話を聞いてとても心配するタケ様、いくつになっても親は親、子供は子供(娘様も80代後半です)。
さわやか室蘭館では100名の入居者様の内55名が90歳以上、100歳以上の入居者様が5名いらっしゃいます。長く生きることだけが目的ではなく、どう生きるか、どう生きたいかを探るためにも、ライフマップを活用しながら入居者様それぞれの笑顔を引き出していきたいと思います。
世界中に蔓延するコロナウイルスの影響により、さわやか室蘭館でも面会規制や外出の自粛を行っています。職員一人一人が行動に気を付け、感染拡大の防止に務めています。暗いニュースばかりが流れる昨今ではありますが、施設にいるから安心ですと思っていただけるよう、笑顔の絶えない日常生活を積み重ねていきたいと思っています。
(山口 真粧美)
※写真・文章は、入居者様ご本人およびご家族様の許可を得て掲載しています。