ライフマップで生きがい発見!! story19
さわやか海響館(福岡県北九州市)
後藤博文様は昭和2年1月生まれの94歳。今年の1月まで、7歳年下の奥様(萃子様)と二人暮らしをしていました。お二人とも持病があり、ご夫婦二人では心配なので、甥御様が施設入居を勧めていましたが、まだ家で生活出来ると言われ、なかなか納得していただけませんでした。海響館には、萃子様の妹の克子様が入居されているご縁もあり、居宅のケアマネージャーと甥御様、奥様の説得で、今年の1月16日にご夫婦そろって海響館に入居されることになりました。
博文様にお会いする前は、偏屈で頑固なイメージでしたが、実際に会ってみると優しく、お話の面白い、笑顔の素敵な男性でした。ライフマップを作成する時も、お話が尽きませんでした。
若松生まれ、若松育ちの博文様ですが、戦争中は、日本体育大学の前身の日大専門学校に在籍していました。航空鍛錬科で勉強していましたが、終戦の為飛行免許はもらえなかったそうです。その後、教授と大喧嘩して学校を中退。お父様にものすごく怒られたと、笑いながら話していました。とても大変な時代を、一生懸命頑張っていたのですね。
博文様のお母様は57歳で亡くなりました。お母様の名前が「キクエ」だったので、お母様が亡くなった後、お父様が育て方も知らないのに、菊を育て始めたそうです。その後、若松の菊友会の会長になり、勉強して盆栽も育てました。お父様が亡くなった後は、博文様がお父様の盆栽をお世話するようになりました。大切にしている盆栽は、奥様と二人一緒に入院した時に枯れかけてしまいました。盆栽は本当は全く詳しくないけれど「親父をしのぶ材料の一つ」とおっしゃっていました。今はその盆栽を海響館の屋上に持って来て、職員も手伝いながらお世話をしています。
博文様は動物好きでもあり、飼っていた猫ちゃんの話をされる時にはお顔がほころんでいました。シベリアから石炭を運ぶ船に乗っていた猫を譲ってもらったり、当時人気だったシャム猫をもらって可愛がったり、多い時は14匹もの猫ちゃんと生活していました。お部屋には、代々一緒に過ごした猫ちゃんたちのお写真を飾っています。
これから何を楽しみたいか伺うと、博文様は少しも悩むことなく「萃子(奥様)と克子(義妹様)の面倒を見る」と言われました。奥様はご病気で、以前より心配性で気弱になっています。奥様とのお時間を大切にしていて、お菓子やジュースを買う時は、必ず奥様の分も一緒に買って一緒に召し上がっています。博文様と過ごす時間を、萃子様もとても楽しみにされています。「何も話さない時間も、いいんですよ」と言われ、心の支えになっているようです。
子供がいないお二人にとって甥御様は「息子以上」です。コロナ禍で遠方の甥御様が施設に来られない中「甥のかわりに克子の面倒を見る」と、入居前から決めていたみたいです。お二人を守りたいという強い気持ちからリハビリを頑張る博文様を見ていると「自分がしっかりしなければ」という意志が伝わってきます。
これからも、優しい博文様がご自分の生活を大切にしながら、愛するご家族を守っていけるように、ささやかながら職員一同お手伝いさせていただきますね。
(秀島 知華子)
※写真・文章は、入居者様ご本人およびご家族様の許可を得て掲載しています。