ライフマップで生きがい発見!! story34
さわやかいずみ館(福岡県朝倉市)
豆田様は、昭和18年3月25日に南嘉穂郡で5人兄弟の4番目(3男)として生まれました。戦争のため、旧朝倉郡三輪町に移住され、三輪小学校、中学校を卒業後、15歳の時に集団就職で東京都港区富士見町にあった「小林製作所」というマツダ自動車の修理工場に3年間勤められました。
18歳の時には海運業者の大型貨物船に乗り、フィリピンのマニラに行かれていたそうです。19歳の時に別の海運業者に転職し、その後は愛媛県の海運会社に転職したもののその会社が倒産し、最終的には北九州の海運業者にて55歳で定年を迎えるまで勤められました。香港、フィリピン、シンガポールなどの東南アジアに始まり、アブダビからフランスまでの地中海やアメリカのニューオーリンズ等、世界中の海を航海されていたようです。
21歳で結婚され、2人の男子に恵まれましたが、海運業の勤務は1年のうち8~10か月ほどが船の上の生活で、家に帰れるのは年に1か月ほどという厳しい勤務だようです。船の中での生活においては、本を読んだり、将棋や五目並べ、オセロ等のゲームをして過ごされていたそうです。また、船の模型を作っては、日本に帰国した時に息子様たちへプレゼントしておられたとのことでした。
55歳の時に離婚され、定年後は道路の舗装工事や交通整理などのアルバイトをしながら過ごされていましたが、60歳の時に町工場で働いている時に出会った女性と意気投合し、再婚されました。北九州市内で20年ほど2人で生活されていましたが、奥様が病気になって入院し、2022年2月にご逝去されました。
その後は1人での生活が寂しいことを姪御様にお電話されていた様です。物忘れもあったりして1人での生活が難しいと感じることが多くなったため、北九州の施設のショートステイを一時期利用され、その後は朝倉市の姪御様宅に同居されることになりました。しかし、本人様も姪御様宅にずっとお世話になるのが申し訳なく感じられ、2022年4月にさわやかいずみ館へ入居されました。
2022年5月2日、初回のケアプラン作成に伴い、1回目のライフマップを作らせて頂きました。
お話の中で、テレビよりもマンガを読んで過ごされることが多く、特に『ゴルゴ13』がお気に入りで過去に何度も読まれたことがわかりました。「また読んでみたい」との希望を叶えるために姪御様にお願いして『ゴルゴ13』などのマンガを持参していただきました。また、長い船旅の思い出として、釣りの話や大きな貨物船を飛び越えてゆくトビウオを帽子でキャッチした話を楽しそうに話してくださったので、Wiiの釣りゲームに挑戦してみましたが、Wiiの操作がなかなか難しくて断念してしまいました。
ちょうどその頃、外国人技能実習生としてインドネシアから2名の職員が入職したので、インドネシア語で話しかけてもらいました。すると、何十年ぶりかにインドネシアのことを思い出されたようで、当時のことをたくさん話してくださり、豆田様にとってもインドネシア人スタッフにとっても、良い交流が生まれました。
2022年9月16日、2回目のライフマップを作ることにしました。
前回の聞き取りの際には出てこなかった「麺類が好き」「絵を描くことが好き」という話がありました。意図したわけではなかったのですが、2回目のライフマップ作成から2日後の昼食のメニューがラーメンでした。その日の午後に顔を合わせた時に「麺が好きという話をしたらラーメンが出たのでびっくりしました。ありがとうございます」と声を掛けられ、こちらの方が慌ててしまいました。時々定期的に麺類が出るので楽しみにしていただきたいこと、麺類だけ大盛にすることもできるということを説明するととても喜ばれ、麺類の時は大盛で提供することになりました。
また、絵を描くことが好きというお話があったので、姪御様に画用紙と色鉛筆と4Bのデッサン用の鉛筆を持参していただき、絵を描いていただきました。「僕は風景画しか描かないよ。それでもいいの?」と言われたので「豆田様の描きたいものを好きなように描いてください」と伝えました。デッサンを最初に描いてくださったのですが、そのあまりにも完成された絵に、その場にいた職員全員が感嘆の声を上げたのを覚えています。どこの風景か本人様にお尋ねすると、「雑誌に載っていた風景の写真を見て絵を描いた」とのことでその写真を見せていただくと、本当に写実的に描かれていることがよく分かりました。
好きなマンガは今でも毎日のように読まれておられます。『ゴルゴ13』は30巻近くあるのですが「最初から読みだして、最後の巻を読む頃には最初の話を忘れているので、飽きることなく読めます」とのことでした。また「絵の方は時々デッサンを描いているけど、本格的に絵として描くのは、誰かにプレゼントとして描く時ぐらいです」と話され、さっそくインドネシア人の職員へプレゼントしてくださいました。評判を聞いた他の職員からも予約が殺到しているようです。
1回だけではなく、ライフマップを何度か作り直しながら質問を重ねていくと新たな発見がありました。それが生きがい作りの一助となることもあるという一つの例だと思います。
(ケアマネジャー・ 山本 純司)