ライフマップで生きがい発見!! story35
さわやかさくらのもり(秋田県秋田市)
さわやかさくらのもりが開所した2020年5月1日に入居された石塚様。秋田市で生まれ、大病することなく元気に暮らしてきましたが、加齢による身体の不調もあって近所の付き合いも少なくなり、ご自宅での生活に不安が生じ始めたため、さくらのもりへ入居されました。
入居当初は開設したばかりで、入居者様の人数が少ないこともあってか、居室で過ごされることが多かったです。その後、徐々に入居される方が増え、仲の良いお友達ができ、一緒に話し、笑い、交流する機会ができたことで【楽しく生活できているよ】と話すようになりました。そこで、今後どのように生活したいのか?どういったことを行ってみたいのか?などライフマップを通して伺ってみました。すると、思ってもみなかった答えが返ってきます。
【もういいです】
この言葉の意味は、石塚様の話を聞いていく中でなんとなく理解したような気持ちになりました。
私は今までたくさんの高齢の方と関わってきました。その方々へ同じようなことを聞くと(買い物に行きたいので歩けるようになりたい・花の世話をしたい・山に登りたい・すしが食べたい・友達を作って交流したい)等々、具体的な将来の目標を達成したいという返答が多く聞かれます。石塚様へも何度か質問の内容を変えてみると違う返答が得られるのではないかと思い試してみましたが、いずれも同じ返答が繰り返され、その後に続けて言われた言葉は【もうたくさんだ】でした。
ライフマップを作成するにあたって石塚様の生い立ちを伺った際には、たくさんのことを語ってくれました。一言でいうと【人生やりきった】ということのように感じました。今までたくさんの場所へ友達と出かけた・おいしいものをたくさん食べた・子供も立派に成長した・一番の趣味だった旅行も日本中歩いたなど、これまで生きてきた中でたくさん、たくさん、たくさん色々なことを経験してきたため、これからやりたいことは【特別ない】と。あぁ、なるほど先ほど話した【もういいです】は、深い意味を持った言葉なのだなと思いました。
話は反れますが、以前他の方へ「桜を見に行きませんか?」と誘ったところ、「行かなくてもいい、たくさん見てきたから」と答えられ、当時若かった私は心の中で「行った方が楽しいのになぜなんだろう?」と思っていました。もしかしたらその方も石塚様と似たような考えだったのかもしれません。
最後に「今後の施設での生活は?」と改めて聞いてみたところ【100歳までゆ~~~くり、暮らしたい】と話されました。今まで忙しく暮らしてきたので、施設での生活は自分なりにゆったりとした暮らしがしたい。レクや行事があれば参加したければする、リハビリは自分なりに頑張る、気が向けば食堂でお友達と話をしにいく、気の向くままに我がままに生活したい、とのことでした。とても素晴らしい、石塚様らしい考えで尊重するべき考えだと思いました。
人それぞれに人生があります。私も年を重ねるごとに体力が落ち、今までできていたことができなくなってきています。その中でも自分なりの楽しみを見つけ、実践しながら生活しています。目的をもって過ごした方が生き生きとして良いと考える方もいますが、それはその人の考えであり、必ずしもそれがすべての人にとっての正しい生き方ではないと思います。石塚様には石塚様の生き方があり、過ごし方があります。私たちはなるべくその人らしい生き方に寄り添って支援にあたる必要があるなと改めて考えさせられる機会でした。
(ケアマネジャー・伊藤 佑樹)