堀本様は2018年3月11日にグループホームあおいうみへ入居されました。入居当初から元気に自力で歩行されていましたが、今年の7月に入り「きつい、腰が痛い」との訴えが多くなりました。症状の進行に伴って食欲も減退し、次第に歩行も困難となって車椅子を使用される日も出てきました。
7月17日に血圧の低下と両足の痙攣が発生したため病院受診を行うと、腎盂腎炎と診断され、緊急入院となりました。その後、炎症反応は改善されましたが自尿が認められず、両側水腎症と診断され、7月31日に膀胱留置カテーテルを挿入した状態での退院となりました。移動は完全に車椅子となり、食事はほとんど全介助が必要で、排泄もベッド上でされるようになっていました。以前から受診していた病院の医師からは「これ以上は症状の回復が難しい」との判断により、看護師が常駐しているさわやか行橋館への転居を勧められ、ご家族様の同意と行橋館の丸塚施設長の了解もあり、9月の転居が決まりました。
堀本様が退院されてすぐに職員間で話し合い、転居されるまでの間はあおいうみの中でできる限りの対応をさせていただこうと決めました。ケアチェック表は月単位のA3サイズに作り直し、バイタルチェック、尿量及び尿の状態、水分量、食事摂取量、特変用の備考欄など状態の変化が一目で分かるようにしました。そうした状況の中、8月30日の深夜に堀本様がベッドから移動しようとした際、膀胱留置カテーテルが外れてしまいました。すぐに訪問医の小野先生に連絡して翌日の往診時に診ていただくと「このままカテーテルを外した状態でしばらく様子を観ましょう」との方針が示され、その指示に従ってケアを続けることになりました。
この日を境に、堀本様に少しずつ変化が見え始めました。移動は車椅子から手摺り歩行や手引き歩行、歩行器使用など徐々に変化していきました。食事の際もご自身でスプーンを持っていただくように職員で声かけを続けた結果、自力で摂取しようとされる行為が見られるようになりました。さらに排泄も「トイレに行きたい」とご本人から訴えるようになり、トイレにて自尿があった時は職員皆で驚きました。血圧は低下から上昇へと変化し、気が付けば以前のような元気な状態に戻られていました。
9月21日、さわやか行橋館への移動日は独歩にて行橋館の車に乗って行かれました。9月は要介護認定の更新月で、8月26日に受けた認定調査の結果は要介護4でしたが、それが要介護1レベルの状態にまで短期間で回復されました。
堀本様は20歳代から70歳代まで美容院を経営されて、ほぼ50年間は仕事一筋だったようです。あおいうみに入居されてからも、夕方頃になると「お客様が待っているから、明日帰ります」と言われることも多く、人の役に立ちたい、必要とされたい、人に喜んでもらいたい、そんな思いや情熱が堀本様の心の中に今も消えることなく息づいていることを感じていました。そして、堀本様の症状が劇的に改善していく様子を見るにつれ、その精神力の強さ、逞しさに心打たれました。以前、内山社長が読売新聞の連載記事で「できないことをサポートするのではなく、できるようにサポートしていくことが基本、やる気を引き出し生き生きとした生活をしていただくような支援をしたかった」と言われていたことの本当の意味が、実体験を通して理解できました。
堀本様は毎月の職員会議をいつも楽しみにされていました。施設内の表彰で「ありがとう賞」の賞状を山本専務から渡された時は、感激されて涙ぐまれていました。一日も早く新型コロナウイルスが終息して、再び入居者様参加型の職員会議が復活する日を、入居者様と共に心待ちにしています。
(グループホームあおいうみ ホーム長 内橋 泰子)
<ご家族様からのコメント>
あおいうみの内橋さん、スタッフの皆様には心から感謝しています。最愛の母の体調不良に直ぐに気がついてくださって素早く対応していただき、大事を免れました。その後も丁寧な介護と細やかな気遣いで奇跡的に回復することができ、驚きの連続でした。私が介護していたらこんなことはできなかったと思います。本当にありがとうございました。