台風15号直撃!その時現場は…

自然災害対応の備忘録シリーズ

2019年9月9日の未明、台風15号の接近に伴い千葉県内では50m級の強風が吹いて鉄塔が倒れ、最大で64万件が停電しました。午前4時頃には千葉市にある「さわやかゆう輝の里」、「さわやかグループホームはなみずき」も停電となりました。近くの道路の信号機も消え、電線が切れて火花が上がっている状況でした。停電は9月12日までの4日間続きました。日中は施設内の温度が40℃近くまで上がり、湿度も高かったため、暑さとの戦いでした。夜間でも30℃に近く、入居者様も職員も寝苦しい夜が続きました。水道は通っていましたが、電気が無いために水道は2階、3階まで上がらず、ガスも使用できませんでした。

<食事関係>

 9月9日の日中より、千葉県内で停電していない各施設の施設長が備蓄用の非常食を持ち出し、さらに追加で食料、飲料水、防災グッズ(懐中電灯、電池、冷えピタ等)を購入しながら応援に向かいました。千葉県内の高速道路も止まっており、午後4時に出発してようやく夜間帯に到着しました。また10日以降も、千葉市内の停電していないスーパーや市街まで買い出しに行き、食料の確保を行いましたが、スーパーもパンや氷、飲料水は売り切れの店舗が多かったです。ゆう輝の里では、9日の朝食以降の食事は栄養士が管理を行い、各施設から集めた非常食、パン、缶詰を提供しました。食器はすべて紙皿で、飲み物も紙コップを使用しました。はなみずきでは、11日以降、付き合いのある食事のデリバリー業者の協力により、入居者様には温かい食事の提供を行うことができました。

<電気関係>

 施設の電気設備点検を行っている業者に連絡を取り、現在の状況確認と発電機の貸出しの依頼を行いました。発電機は合計3基借りることができました。発電機の動力はガソリンの為、停電の影響のないガソリンスタンドで給油を行いましたが、渋滞が発生していたために1時間ほどかかりました。発電機は日中はエアコンと扇風機の動力として使用しましたが、1台の発電機で使用できるのは居室用のエアコン1台が限界で、フロアにある業務用エアコンは稼働できなかったため、ゆう輝の里では施設内の室温を下げることが難しく気休め程度にしかなりませんでした。はなみずきでは入居者様が少ないため、エアコンが使える1室に全員が集まって避難所としていました。夜間帯は発電機を使って工事用の電球を使用し、各フロアの最低限の明かりの確保を行いました。

<入居者様対応>

 ゆう輝の里では日中、入居者様にはできるだけ各フロアの共同スペースに集まって過ごしていただきました。温度が高いため、水分補給をしっかりと取ってもらうよう職員に指示を出し、水分量の把握をしながら対応しました。3階フロアは他の階より温度が上昇しており、具合が悪くなった入居者様には1階ショートステイの空き部屋に移動していただくことにしましたが、エレベーターも止まっていたため、シーツを使用して職員が体を持ち上げ、階段で降りて運んで対応しました。夜間は発電機を利用して最低限の照明と懐中電灯を廊下と階段に設置し、巡視の時にはランタンを持って対応しました。入居者様も不穏になることもなく、転倒やエスケープ等の事故もありませんでした。

<家族様対応>

 ゆう輝の里では、電気が一時復旧した際に家族様に状態報告を行いましたが、電波が悪く電話が繋がらないご家族様もおり、すべてのお客様に連絡ができず再度停電になってしまったため、その後は携帯電話を使用して連絡しました。はなみずきでは携帯電話で家族様に連絡をとり状況説明を行いました。2日目には家族様の迎えにて1名自宅に避難された入居者様がいらっしゃいました。

■今回の災害における教訓と今後の検討事項
 ・各施設もしくはエリア内で発電機の備蓄を検討する。
 ・排せつ等に使用する水の確保として、浴槽の水を貯めておく。
 ・家族様への連絡が難しい時を考え、ホームページ等に災害用連絡ツールを確保する。
 ・施設の規模に合わせた分量・包装形態の非常食を備蓄し、非常用ソフト食も用意する。
 ・その他、あった方が良いと感じた物:非常用の瞬間冷却材、各居室用の懐中電灯、カイロや毛布(冬期)

(さわやか倶楽部 千葉エリア担当・樫村 憲彦)

~さわやか倶楽部「コンプライアンス推進会」での報告より~