一社員の震災ボランティアから生まれた休暇制度とは?

さわやかはーとらいふ西京極 久野 嘉之 さん

さわやか倶楽部では、2024年4月から「ボランティア休暇制度」をスタートしました。自然災害の被災地での支援活動や地域の社会福祉活動のために、社員が休暇を申請・取得できる制度です。そのきっかけとなったのは、「能登半島地震」の災害ボランティアに参加したある社員の想いと行動でした。


今回ご紹介するのは、京都市の介護付きホーム「さわやかはーとらいふ西京極」でケアマネジャーとして働く久野嘉之さん。ボランティアに参加したきっかけや現地での活動の様子についてお話を聞いてみました。

─今回の活動に参加しようと思ったきっかけは何ですか。

久野さん:近年、全国各地で自然災害が多く、高齢者のみの世帯も増え続けています。今後はますます災害支援におけるケアマネジャーの活躍が期待されていることから、2022年12月に「災害支援ケアマネジャー」の資格を取得しました。そしてこの度、2024年の元日に石川能登半島地震が発生し、日本介護支援専門員協会事務局が、全国のケアマネジャー(特に災害支援ケアマネジャー)を対象に、被災地のケアマネジャーの後方支援等でボランティアの派遣要請を開始したことを知り、施設に休みを申請して申し込むことにしました。

─どのような場所で活動をしていたのですか。

久野さん:活動場所は金沢市内にあるいしかわ総合スポーツセンターで、金沢駅からバスで15分くらいの場所でした。地震直後に被災者が身を寄せる体育館や公民館などは「1次避難所」、余震などを考慮して少し離れた大型施設などに設けているのが「1・5次避難所」、ホテルや病院、福祉施設など生活や介護の環境が整った施設は「2次避難所」と位置づけられていて、いしかわ総合スポーツセンターは「1・5次避難所」でした。

活動に参加した期間は2月3日~7日で、実働は2月4日~6日の3日間です。私が行った金沢市内は、被害にあった様子は見る限り無く、車や電車、バス、タクシーなども問題なく動いていました。初日はそこまで寒くなかったのですが、2日目からは雪が積もり、北陸の寒さを感じました。移動中のタクシードライバーの方に、ボランティアで来ていることを話すと、何度も感謝の言葉を頂き、嬉しかったです。

─現地での活動内容や被災者の方の状況を教えてください。

久野さん:避難場所は3つに分かれており、感染された方や介護が必要な方などで区分けされていました。被災者の食事や排泄の介助、レクリエーションで盛り上げるスタッフ、体調確認にまわる看護協会の方、リハビリやマッサージを必要とする方のために鍼灸師・マッサージ師協会の方の姿等が見られました。

ケアマネジャーの活動内容は、県庁や他団体との連絡調整、避難者のご家族、施設担当者の対応や避難者のスクリーニング、アセスメントでした。その中で、私はリーダー業務として、スクリーニングという入退所の確認業務の指示や、新規入所者の情報をアセスメントシートに記載してマッチング業務の指示を行い、マッチングが決まった際にはその方の情報を県庁の担当職員やマッチング班、DMAT、DWAT、DRAT(災害支援チーム)、保健師協会、看護協会、阪急交通などの関係先へ報告しながら、日本介護支援専門員協会と連携をとる役目でした。

─実際に活動に参加してみて、どんなことを感じましたか?

久野さん:今回、被災された方に直接接する機会は少なかったのですが、とにかく任務を遂行することに必死で、周りを見る余裕がありませんでした。電話も鳴り止まず、休憩時間を取るのも一苦労でした。

2次避難所を探してくれる県庁や、2次避難所の施設の方からの電話が多く、対応したことの記録や次のボランティアの方への申し送りがとても大変でした。皆がみんなボランティアであり初対面でもあり、でも志は高い方々で、『やるしかない!』という連帯感を強く感じました。自分もやっているうちに段々と、被災された方やその周りの方のために、しっかり責任を持ってやり遂げようと思うようになりました。

─被災者の方々はどんな様子でしたか。

久野さん:家や家族を失って意気消沈されている方や、いつまでここにいるのかとイライラされている方、転倒や体調悪化で病院に救急搬送される方もいました。ご家族の方からの電話で「父が迷惑をかけたくないから断食をすると言っているので、様子を見てきて欲しい」と頼まれるケースもありました。

2月4日には歌手の伍代夏子さんが来られ、炊き出しで今川焼や甘酒を振る舞っておられました。会場でのリクエストに応えて歌も歌われ、被災者の方々もたいへん喜ばれていました。伍代さんはそのあと私達ボランティアスタッフの前にも来られて、感謝の言葉とともに「共に頑張りましょう!」と言ってくださり、とても励みになりました。

─今後のボランティア活動への想いを聞かせてください。

久野さん:地震災害が続く日本には高齢者のみの世帯も多く、これからも同じようなことが度々発生すると思われます。現地で困っている高齢者やケアマネジャーのお役に立てるよう、これからも災害支援ボランティアの活動を続けていきたいと思います。

今回、ボランティア活動に行くために施設を少し留守にすることを職員や入居者様、ご家族様にお伝えすると、たくさんの方から励ましの言葉やメールをいただきました。また、私の家族も理解してくれて、快く送り出してくれました。ご協力くださった皆様に、この場を借りて深く感謝申し上げます。


■ボランティア休暇の新設へ

ウチヤマグループでは、これまで大規模な地震や集中豪雨などの自然災害発生にあたり、介護施設における被災高齢者の無償受け入れや支援物資の配送、街頭での募金活動など、さまざまな活動を行ってきました。今回は久野さんの災害支援活動への想いを聞いた施設の管理者からエリアマネジャーを通じて本社の人事部に相談があり、山本社長の同意を得てボランティア休暇制度の新設につながりました。久野さんはこの制度適用の第1号になります。社員の社会的活動への支援体制を会社としても整えてまいりますので、ぜひ活用してください!